今日は日本の伝統的なお弁当、松花堂弁当と幕の内弁当のお話をしたいと思います。
どちらも「和」のお弁当の代表格。
でも、違いを説明できますか？
「ちょっと豪華なお弁当が松花堂弁当で、駅弁といえば幕の内弁当」――なんとなくそんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。実はこの2つ、ルーツもスタイルも全く異なるんです。
松花堂弁当とは？
松花堂弁当は、黒塗りの蓋付きの箱に入った、ちょっと格式高いお弁当。
蓋を開けると、箱の中は十字型に仕切られていて、そこに焼き物、煮物、お刺身、ご飯などが色とりどりに美しく盛り付けられています。
少しずつ多彩なお料理を楽しめる、まさにミニ懐石のようなお弁当です。
「松花堂」の名前の由来
「松花堂」という名前は、江戸時代初期の文化人・松花堂昭乗（しょうかどう しょうじょう）に由来しています。
彼は京都・石清水八幡宮の社僧でありながら、書・画・茶道にも秀で、本阿弥光悦とも親交があったほどの多才な人物。
ある日、近所の農家が使っていた種入れの箱を見て、インスピレーションを受け、自ら道具箱を作りました。
その箱が、まさに今の松花堂弁当の原型。四角い箱の中に十字の仕切りがあり、絵の具やたばこを入れていたそうです。
時は流れて昭和時代――
名料亭「吉兆」の創始者・湯木貞一がその道具箱に目を留め、「これは弁当に使えるのでは」と発想。懐石の精神を取り入れ、ついに今のような松花堂弁当が完成しました。
ちなみに、昭乗が晩年を過ごした「松花堂（庵）」の跡地は、現在「松花堂庭園・美術館」として整備されており、ここでは吉兆が提供する本格的な松花堂弁当をいただくことができます。これは一度は体験してみたいですね。
一方の幕の内弁当は？
白いご飯に、焼き魚、卵焼き、煮物などのおかずが数種類――
これぞ、日本のお弁当の王道ともいえるスタイル。スーパーやコンビニ、駅の売店でもおなじみの存在です。
実は、歴史は松花堂弁当よりずっと古く、ルーツは江戸時代にまでさかのぼります。
「幕の内」の意味とは？
「幕の内」とは、歌舞伎や能の観劇中の休憩時間＝幕間（まくあい）に食べるお弁当のこと。
サッと食べられるよう、ご飯とおかずを一つの容器に詰めたのが始まりとされています。
さらにその原型は、武家社会での正式な宴席料理「本膳料理」にあるとも言われています。
本膳料理では、主膳・二の膳・三の膳と複数の膳に料理を盛りつけて提供しました。その中の主膳（ご飯・主菜・副菜・香の物）が、今の幕の内弁当に似ているんです。
幕の内弁当の広がり
明治〜大正時代になると、鉄道の発展とともに駅弁として大人気に。
現在では、全国どこでも見かける、まさに日本のスタンダードなお弁当となりました。
どちらも日本の食文化の結晶
松花堂弁当が「美しい和の御膳」であるなら、幕の内弁当は「庶民の日常を支える味方」。
ルーツは違えど、どちらも日本人の知恵と美意識が詰まった、誇るべきお弁当文化です。
機会があれば、ぜひ京都の「松花堂庭園・美術館」で本物の松花堂弁当を楽しんでみてくださいね。
基本情報（訪問する前にチェック）
| 項目 | 内容 |
| 名称 | 松花堂庭園・美術館 |
| 所在地 | 〒614-8077 京都府八幡市八幡女郎花43-1 |
| アクセス | 京阪電車”石清水八幡宮駅”から路線バスで”大芝・松花堂前”で下車 |
| 営業時間 | 9:00〜17:00 |
| 定休日 | 月曜 休 |
| 入場料 | 庭園入園料大人300円 美術館入館料大人400円 |
| 所要時間目安 | |
| 公式サイト | https://shokado-garden-art-museum.jp/eng/ |
| 電話番号 | 075-981-0010 |
| 備考 | レストランに関しては完全予約制にて、来店希望日の２日前まで予約を受け付けています。詳しくはサイトをご覧ください。 |
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