日本人とお餅の関係
お正月の鏡餅やお雑煮に登場する「お餅(もち)」は、
日本の食文化に欠かせない存在です。
特別な行事の象徴であり、神様へのお供え物でもあるお餅は、
古くから「力の源」や「長寿の象徴」として親しまれてきました。
現在では、家庭の食卓から和菓子、スイーツまで幅広く登場し、
日本人にとって最も身近な伝統食のひとつです。
餅の歴史|神へのお供え物から日常の味へ
お餅の歴史は古く、奈良時代(8世紀)にはすでに神へのお供え物として登場していたといわれています。
当時は貴族や神職だけが食べる特別な食べ物で、五穀豊穣や無病息災を祈る儀式のお供物として使われていました。
時代が下るにつれ、庶民にも広まり、年中行事や祝い事で食べられるようになります。
「鏡餅」「お雑煮」「餅つき」など、季節の節目に餅を食べる文化は、この古代の信仰がルーツです。

原料|お餅は「もち米」からできる
お餅の主な原料はもち米(glutinous rice)。
通常のご飯に使う「うるち米」とは品種が異なり、
もち米は炊くと粘りが強く、つややかで弾力のある食感になります。
もち米の代表的な品種には「こがねもち」「はくちょうもち」などがあり、
東北や新潟といった米どころで多く生産されています。
あの伸びるような弾力とほのかな甘みは、このもち米ならではの特徴です。

作り方|伝統の「もちつき」と現代のスタイル
伝統的なもちつき(Mochitsuki)
蒸したもち米を臼(うす)と杵(きね)でつく「もちつき」は、
日本の年末の風物詩として今も各地で受け継がれています。
リズミカルに餅をつく姿は、家族や地域のつながりを象徴する光景。
できたての餅はやわらかく、自然な甘みがあります。

現代の作り方
現在は、家庭用の電気もちつき機や炊飯器を使って簡単に作ることもできます。
スーパーや和菓子店では手軽に買えるパック餅が主流で、
トースターで焼いて食べたり、鍋に入れたりと、さまざまなアレンジで楽しまれています。
海外での“Mochi”と日本の「餅」は違う
最近では「Mochi」という言葉が海外でもよく知られていますが、アイスの一種を指すことが多く、日本人が考える「餅」とは少し意味が異なります。
日本で言う「餅」は、もち米を蒸してついた伝統的な食材そのもののこと。
焼いたり煮たりして主食や料理に使うほか、和菓子としても幅広く親しまれています。
海外で広まった“Mochi”スイーツは、あくまでこの日本の食文化をもとにしたアレンジ版なのです。

食べ方|地域と季節で変わる「お餅の楽しみ方」
お餅は甘いものから塩気のあるもの、そして行事に合わせた餅菓子まで、実に幅広い楽しみ方があります。
ここでは代表的な食べ方を紹介します。
しょっぱいお餅(Savory Mochi)
磯部もち(Isobemochi)
焼いたお餅に醤油をつけ、海苔で巻いた香ばしい一品。
外はカリッと、中はもちもち。日本の家庭で最も親しまれている伝統的な食べ方です。
醤油に砂糖を加えて「砂糖醤油もち」にする場合もあり、甘じょっぱさがやみつきになります。
からみもち(Karami Mochi)
大根おろしに醤油を混ぜたさっぱり味。もちのやわらかさと大根の辛味がよく合います。
納豆もち(Natto Mochi)
納豆を絡めた一品。ねばねばともちもちのダブル食感が特徴で、特に京都や山形などで親しまれています。

甘いお餅(Sweet Mochi)
あんこ餅(Anko Mochi)
つきたての餅に甘い小豆あんを絡めた定番の味。行事や祝い事の際に食べられることが多いです。
きな粉餅(Kinako Mochi)
きな粉は炒った大豆を粉にして砂糖を加えたもの。香ばしく、ほっとする甘さです。
ずんだ餅(Zunda Mochi)
枝豆をつぶして砂糖を加えた枝豆あんが特徴。鮮やかな緑色とやさしい甘みが魅力の東北地方の郷土菓子です。

季節の和菓子としての餅(Seasonal Mochi Sweets)
お餅は日本の四季とともに進化してきた和菓子文化の中心でもあります。
桜餅(Sakura Mochi)
春の訪れを告げるピンク色の餅菓子。桜の葉の塩漬けで包まれ、香りと塩気が甘い餡を引き立てます。
柏餅(Kashiwa Mochi)
端午の節句(5月)の定番。柏の葉に包まれ、子孫繁栄を願う縁起物。
草餅・よもぎ餅(Kusa Mochi)
よもぎを練り込んだ鮮やかな緑の餅。ほろ苦さと香りが春らしい味わいです。
苺大福(Ichigo Daifuku)
やわらかい餅の中に餡と丸ごとのいちご。フルーツと和の組み合わせで海外でも人気。
おはぎ(Ohagi)
秋のお彼岸に食べる伝統菓子。もち米をつぶして小豆あんで包んだ素朴な甘味。

四季折々の色・香り・食感があり、「見る・食べる・季節を感じる」日本独自の食文化です。
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お雑煮(Ozoni)
お正月の定番料理。
関東では角餅を焼いて醤油仕立ての澄まし汁に、
関西では丸餅を煮て白味噌仕立てに。
地域によって味も具材も異なり、旅先で食べ比べてみるのも楽しい体験です。

餅入り料理(Mochi in Dishes)
鍋料理に加えればスープを吸ってもちもちの食感に。
「力うどん(もち入りうどん)」や「餅グラタン」などの現代風アレンジも人気です。
また、小さく切った餅をお好み焼きやもんじゃ焼き、ピザのトッピングにすると、
とろっと伸びて食感のアクセントになります。

お汁粉・ぜんざい(Oshiruko & Zenzai)
小豆あんを温かい汁にして、焼いた餅や白玉を加えた日本の冬の定番スイーツです。
小豆の粒があるかどうか、汁の多さ、地方によって呼び方が異なります。
寒い季節に体の芯から温まる、やさしい味わいが魅力です。

鏡餅と鏡開き(Kagami Mochi & Kagami Biraki)
お正月に飾る「鏡餅」は、年神様へのお供え物。
丸い形は「円満」や「調和」を象徴し、
上下二段に重ねることで「福が重なる」願いが込められています。
1月11日頃に行う「鏡開き(Kagami-biraki)」では、
固くなった鏡餅を割って、お汁粉やぜんざい、揚げてかき餅などにしていただきます。
これは「神様から力を分けてもらう」という意味があり、
“食を通じた祈り”として日本の精神文化を感じられる瞬間です。

一升餅(Issho Mochi)
子どもの一歳の誕生日に行われる伝統行事。
「一生(いっしょう)食べ物に困らないように」という願いを込めて、
一升(いっしょう)=日本の容量単位で約1.8リットル、もち米にすると約1.4kgの丸いお餅を風呂敷に包み、子どもに背負わせます。
歩きはじめたばかりの子どもがよろよろとお餅を背負う姿は、
家族にとって微笑ましいお祝いの瞬間です。
海外旅行者へのおすすめ体験
- 年末年始に訪れるなら、もちつき体験イベントに参加してみましょう。地域の神社や観光施設で、外国人向けの体験が開かれています。
- 冬の旅館やカフェでは、ぜんざいやおしるこなどの餅スイーツを味わえます。お雑煮があればぜひ試してみてください。
- スーパーや和菓子店で買える餅や大福を、宿泊先で食べ比べてみるのもおすすめです。
結び|日本のお餅を“目で、舌で”楽しむ
お餅は、古くから日本の文化と深く関わり合いを持ってきました。
これほど多彩なバリエーションを楽しめるのは、日本にいるからこそ。
ぜひもちつき体験に参加したり、旅先でさまざまなお餅を味わったりして、
日本の文化を“目で、舌で”堪能してみてください。