3月の日本は、まだ「春そのもの」ではありません。
けれど、冬が少しずつ緩み、日差しや空気、街の動きに変化が現れ始める時期です。
桜の開花が注目されるのは3月下旬から4月ですが、
その前の3月前半〜中旬は、予定に縛られず、風景の変化をそのまま受け取れる季節でもあります。
このガイドでは、有名な見頃や定番観光地ではなく、
春に向かって動き出す様子を実感できる場所を、具体例とともに紹介します。
瀬戸内海エリア
島と海、光が変わり始める場所
瀬戸内海沿岸や島々では、3月になると寒さが和らぎ、旅がしやすくなります。
尾道周辺の港町、小豆島の海沿い集落、直島の島内散策などでは、
観光のピーク前ならではの静けさの中で、海と街の距離の近さを感じることができます。
フェリー移動も安定し、日中は歩いて回れる気温になります。
3月の瀬戸内は、「何かを見る」より「移動すること自体を楽しむ」旅に向いたエリアです。

奈良盆地
桜の前に見える、土地の広がり
桜が咲く前の奈良盆地は、驚くほど静かです。
法隆寺周辺、飛鳥の田園地帯、唐招提寺の境内などでは、
花よりも地形や空、建物の配置が強く意識されます。
この時期の奈良は、観光地というより
長く人が暮らし続けてきた土地としての姿を感じやすい季節です。

奈良の橿原神宮もいいですよ。詳しくはこちら
伊豆半島
海を眺めながら歩く、早春の道
伊豆半島は夏の印象が強い地域ですが、3月は歩く旅に適した時期です。
下田周辺の海岸線、稲取の港町、城ヶ崎海岸の遊歩道などでは、
海風は冷たいものの、長時間の散策が可能になります。
海を「楽しむ」季節ではなく、
海と陸の境界を感じながら移動する季節が3月の伊豆です。

中部地方の山間部
冬と春が重なる風景
中部地方の山間部では、3月ははっきりとした観光シーズンではありません。
高山の旧市街、木曽福島の宿場町、白馬の麓エリアなどでは、
日陰に雪が残り、日向では春の気配が見え始めます。
冬と春が同時に存在するこの風景は、3月ならではのものです。

市場・商店街・日常の場所
3月は、有名観光地よりも生活に近い場所が印象に残りやすい月です。
市場や商店街では、
冬の食材が少しずつ姿を消し、菜の花、春キャベツ、新玉ねぎ、あさりといった、春の始まりを感じさせる食材が並び始めます。
派手な「旬」ではありませんが、
食材が静かに切り替わる様子から、季節が確実に前に進んでいることが伝わってきます。
地元の食堂で、
さわらや、あさりの入った汁物に出会うこともあります。
3月の日本では、日常の食事そのものが季節の案内役になります。

日本における3月という時間
日本では、3月は季節の変わり目であると同時に、
学校や多くの会社で年度が終わる月でもあります。
卒業、異動、引っ越し、送別。
街の雰囲気は落ち着いていながらも、内側では次の始まりに向けた準備が進んでいます。
旅をしていると、駅や商店街、住宅街など、さまざまな場所で
「何かが終わり、次に向かっている」空気に出会います。
3月の日本を歩くことは、
風景だけでなく、人々の時間の流れに触れる体験でもあります。

3月の日本:余白を持って旅する
3月の旅は、完成された景色を求める人には向かないかもしれません。
けれど、選択肢があり、調整がきき、静かに日本を観察したい人にとっては、非常に自由な時期です。
春が始まる前の、日本の姿。
その途中に立ち会えるのが、3月という季節です。

4月へ向けて:桜が主役になる前と、その先
3月は、春が「始まる途中」に立ち会える季節です。
そして4月になると、日本の風景は一気に桜を中心に動き始めます。
同じ場所でも、3月と4月では印象が大きく変わります。
静かだった道に人が集まり、余白のあった景色が、祝祭的な表情を帯びていきます。
3月に感じた移ろいを踏まえたうえで桜の季節を迎えると、
4月の日本は、より立体的に見えてくるはずです。
次の記事では、桜が本格的に咲く4月の日本を、混雑との向き合い方も含めて紹介します。